経済のグローバル化やインターネットの普及にともない、ビジネス上、英語の必要性はますます高まっています。
今日、英語は、単に英語圏の人たちとの日常会話の手段ではなく、国際語として、世界中の人々とビジネスを進めるために欠くことのできないツールになっています。
日本人は、英語の勉強を中学・高校で6年間、人によっては大学で2年間、さらに就職後も続けています。
合計10年を超える年月、英語を勉強してきたにも拘わらず、外国人とのコミュニケーションがスムーズにできない人が多いのはなぜでしょうか?
英語を含めた西洋言語と日本語とは、あまりにも違いが大きく、しかも、日常生活において、英語を使う機会がそれほど多くない、などの理由が考えられます。
しかし、話したり、聞いたりする行為は、確かに、使う頻度や慣れに大きく影響しますが、読んだり、書いたりする能力は、必ずしも日常的に英語に接していなくても、維持・向上させることが可能です。
本稿では、ビジネス英語を強化するためのヒントをお伝えしたいと思います。
ビジネス英語では、単なる挨拶や海外での買い物・観光見物などと違って、誤解される可能性がなく、正確で、迅速な英語活用力が必要です。
訂正や言い直しは、信用失墜につながります。毎回、真剣勝負と考えるべきでしょう。そのために必要なスキルは、次の4つです。
順に検討していきましょう。
- 文法の知識
- 語彙(単語・イディオム)の知識
- 専門分野の知識
- 背景知識
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文法の知識
英文法は、中学・高校で学んでから長年月復習したことがない人がほとんどでしょう。しかし、ビジネス英語を強化するためには、英文法を再度きちんと押さえておく必要があります。
そのためのお勧めの教科書は、次の2冊です。
- Raymond Murphy(著)、“English Grammar in Use Book with Answers and Interactive eBook: Self-Study Reference and Practice Book for Intermediate Learners of English”2015年7月、Cambridge University Press.
- Martin Hewings(著)、“Advanced Grammar in Use with Answers and eBook: A Self-Study Reference and Practice Book for Advanced Learners of English,” Third Edition. 2015年6月、Cambridge University Press.
1.は、初級~中級向け、2.は中級~上級向けです。いずれも、文法的記述以外に数多くの実践的例文と練習問題(Exercise)・解答が載せてあり、しかもウェブ・サイトでネイティブの発音を聞くこともできます。
語彙やフレーズ・用法なども、上記テキストで十分カバーされていますので、別途入手する必要はありません。
唯一の欠点は、イギリス英語で統一されていますので、スペルがアメリカ英語と異なる単語があることです。
語彙(単語・イディオム)の知識
ここで言う語彙は、一般的な語彙ではなく、専門分野の語彙を意味します。一般的な語彙は、上記した1.および2.のテキストで掲載されている範囲で十分です。
他方、専門分野の語彙は、業界紙、学会論文、斯界の企業・団体のホームページなどで調べ、正確に翻訳できないといけません。
業界によって統一的な邦訳語が決まっている単語も多いので、間違えないようにする必要があります。
必要に応じて、英語→日本語の「専門用語辞典」を購入する必要があります。
専門分野の知識
大学の英文科を卒業していても、企業で使いものにならないのは、英語力が不十分だからではなく、専門分野の知識に欠け、これを習得しようとしない態度にあります。
単なる通訳者・翻訳者として機能する「英語屋」で満足であれば、それでも良いですが、更なるステップ・アップを狙う場合は、専門知識の涵養が必須です。
そのためには、日本語版はもちろんですが、英字紙を含めて、業界の動向に注意を払うことです。
さらに、自社の目指す方向、社内の人的・設備的・情報的リソースの配備状況、業界内での地位などにも関心をもち、判断を誤らないようにしなければなりません。
私の友人が勤務しているアメリカ資本の企業では、すべての決裁書類を英文で簡潔に書くことはもちろんですが、その内容をPower Point数枚で表現し、幹部にプレゼンできなければなりません。
このような場合、知識の広さ・深さに加えて、英語での表現力も問われる訳で、部門内で毎回リハーサルを行い、必要な修正を加えて発表を行い、評価を受けるそうです。
現下の環境においては、技術系ではAIやIoTが、文科系では各国の法的規制の動向が、それぞれ企業の命運を決める重大関心事のはずで、その詳細を英語で第三国の外国人に説明し、説得できなければなりません。
この段階では、読み、書くことに加えて、聞き、話す能力も問われます。
国際会議などに積極的に参加し、世界中にネットワークを張っておくことも、将来役立つはずです。
専門分野にもよりますが、海外の大学・大学院に留学して、学び直すという選択も考えられます。
そのためには、TOEIC、TOEFLなどの英語能力試験にも挑戦し、自らの弱点を知り、強化することも重要です。
ただし、このような受験は、高得点を取ることが目標ではなく、あくまでも専門分野において、英語での活躍の場を広げることにあると心得るべきでしょう。
英語は目的ではなく、階段を一歩ずつ上るための手段であるということを忘れてはいけません。
背景知識
上記と多少重複しますが、専門知識のみでは、国際舞台で戦えません。
各国には、それぞれ歴史的・政治的・地政学的あるいは経済的背景があります。そのような、相手国の背景事情に精通していないと、先方の信頼を得ることができません。
英語に関しても、イギリス人が相手であれば、イギリス英語のスペルを採用すべきでしょうし、法的拘束力をもたせた文書の場合は、関係代名詞などを多用し、様々な情報を1文に盛り込む工夫が必要になります。
アメリカ人が相手の場合は、簡潔で、分かりやすい表現とPower Pointによるプレゼンやディベート能力が必要になります。プレゼンでは、開始直後にユーモアを入れることを忘れてはなりません。
アメリカでは、パーティーに接待したり、接待を受けたりする場合も多いです。
時間通りに訪問すべきか、遅れていくべきか、あるいはワインなどの手土産を持参するのか否かなど細部まで事前に調査し、慣行を承知しておくべきです。
慣行に外れた行為をおこなうと、「田舎者」という評価をされ、軽く取扱われます。
海外出張においては、例え数日間の滞在であっても、その国で日常的に使われている言葉の幾つかを覚えて行くと親近感が増し、ビジネスがスムーズに運ぶ可能性があります。
「こんにちは」、「ありがとう」、「お元気ですか?」、「さようなら」程度の現地語を、背景知識として覚えて行くのは当然のことです。
余談になりますが、インドでは左手が不浄の手とされ、食事や握手は必ず右手を使わねばなりません。
さらに首を縦に振るとNOで、横に振るとYESというジェスチャーということも背景知識として知っておく必要があります。
国により、民族により、言葉や慣習は異なり、戸惑うことも多いですが、それも旅の楽しみではあります。
まとめ
ビジネス英語を目的ではなく、手段の1つと考え、専門分野の拡大・探求に利用するという姿勢が重要です。
英語圏の高校生は、日常的に50,000~60,000語の語彙を使っていると言われています。
その点では、日本人はとてもかなわないでしょう。
私は、英語を日本の公用語に加えて、すべての文書・パンフは、日本語・英語の2か国語で行うという法律を制定するのが最も国益にかなった方法だと、個人的に考えています。
しかし、それでも、英語が日本国内どこでも通用する言語になるには、1世代(約30年間)以上の長い年月がかかることでしょう。
ちなみに、EUの公用語は24あります。世界には、6,000~7,000の言語があるといわれていますが、今後急速に集約され、消滅していく言語も多いと思われます。