ネタバレ含みますのでご注意ください。
少しでも、映画を知っている人であれば有名な作品。
沢田研二、菅原文太主演と豪華でありながら、興行的には失敗。
どこか反権力的な部分があり、それをショッキングなテーマを通じて発散させているようからかな。
今でも十分際どいテーマだが、良くこの内容を昇華して、娯楽作品にしたと思う。
クリストファー・リーヴの『スーパーマン』のポスターが街に貼られていて、懐かしい気分にさせる。
昭和54年の日本は、次の時代に向かって勢いづいていた。
そんな昭和の良いところが詰まっているだけでなく、今見ても色あせない魅力がたっぷり。
個人的に邦画の中で好きな作品のひとつです。
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『太陽を盗んだ男』あらすじ
予告動画はこちらになります。 ↓ ↓ ↓ ↓
中学校で理科を教えている城戸誠(沢田研二)は、「風船ガム」の仇名で呼ばれる教師。
休み時間は一人で壁当て、フェンスによじ登って雄叫びをあげる。
彼は、肉体に溜まり切ったエネルギーを爆発させる機会を待っていた。
遠足の休憩で止まっていたバスに突如、機関銃と手榴弾で乗り込んでくるオッサン。
バスジャック犯に人質になっている生徒の救出の為、警察が出動。
山下警部(菅原文太)が陣頭指揮を執る。
城戸は警察に犯人の要求を伝えるために開放される。
武器を置いて乗り込む城戸と山下。
男だけサークルを組むように連れて行く。
山下の捨て身の行動で犯人は狙撃手によって射殺される。
この事件が城戸にとっての起爆装置であったのかもしれない。
城戸は、東海村の原子力発電所からプルトニウムを強奪。
アパートの自室で、原爆製造に成功する。
しかし、作ってみたものの使い道がわからない。
バスジャックで知った山下警部を連絡相手として指名し、まずはテレビのプロ野球ナイター中継を試合終了まで見せろと要求。
国会議事堂に潜入して、女子トイレに仕掛けた原爆が本物と知った警察、政府首脳は、要求のバカバカしさに唖然としながらも要求に応じる。
次の要求は、沢井零子(池上季実子)の番組を通じて、ローリングストーンズの日本公演を実現させること。
しかし、サラ金に借金をした返済にあてるために、第3の要求として現金5億円が告げられる。
その間、零子は知り合った城戸が原爆の犯人であると悟り接触する。
現金の受け渡しで混乱するデパートでの城戸と山下の駆け引き。
原爆回収に成功した山下だが、再び城戸が保管しているビルから原爆を奪取。
車による追跡戦の末での零子の死。
そして、ローリングストーンズ公演の日、城戸と山下のガチンコ対決。
死闘の末、山下は城戸と心中をはかり死亡するが、城戸は奇跡的にどうにか生きながらえた。
瀕死の城戸は原爆を持ちながら街を彷徨う。
『太陽を盗んだ男』感想①:『悪魔のようなあいつ』との関連性
『太陽を盗んだ男』を知ったのは、長谷川監督が脚本・沢田研二主演のコンビで作られた『悪魔のあいつ』を見てから。
こちらも長らく封印されていた伝説のドラマ。
TBSの名演出家・久世光彦と組んだ3億円事件を題材に、主人公・可門良の不安と狂気が鮮烈に描かれている。
出演者も若山富三郎、藤竜也といったキャスティングも豪華。
内容があまりにも生々しく、衝撃を受けた。
過激なシーンが多いことから、今の放送コードや表現規制を鑑みると封印されていたのも頷ける。
考えてみると、同じ久世演出の『寺内貫太郎一家』もホームドラマではあるけど、シュールなところがあるドラマだったが、『悪魔のようなあいつ』は群を抜いて異様なドラマだと思う。
同じ時期に放映された「傷だらけの天使」があることから、特異な作品の企画が受け入れられる土壌があったのかもしれない。
ところどころ、「太陽を盗んだ男」を思わせる脚本、演出があり、この作品が「太陽を盗んだ男」のベースとし、より映画的にエンタメ要素を取り入れたと感じる。
『太陽を盗んだ男』感想②:ストーリー
職務に全く無気力な中学教師が学校での脱力感と、プルトニウムを手に入れ、自室で原爆を造る際の緊迫とした集中の度合いとの対比が、見事です。
淡々と原爆を作っていく過程は、日常の中に「非日常」を描ききっていて秀逸。
特に目的意識がないのに原爆をダシに国家を脅して遊ぶジュリー演じる城戸も、現実に似通った事件を見てきたことから荒唐無稽な人物像とはどうも思えないんですよね。
自分の要求自体が曖昧なことから、「何をしたいのか分からない」という自分へのジレンマ。
原爆をダシに使った一連の行動は、孤独への怖れを隠すカムフラージュかな。
つながりを求めて、偶然知った山下刑事を指名し、DJの沢井零子に接触し、周囲の人間を犠牲にしてでも世間との関りを持ち続けたいという考えは、現代でも変わることがない犯人像の典型でもある。
ラスト近くに山下警部が、ズバリ犯行の動機を言い当てる訳だが、この場面が実に衝撃的で悲しい。
一人のオタク青年の悲劇だったと知らされる瞬間。
やがて始まるオタク世代へあらかじめ向けられた告別のようにも感じる。
現代人の抱えている「闇」を客観的にあぶり出したブラック・コメディーとしても、この作品は完成されている。
出典:https://natalie.mu/eiga/news/256948
『太陽を盗んだ男』感想③:沢田研二
もうジュリーの怪演につきますね。
城戸先生役のジュリーは廃退的な雰囲気を持ちながらも、世間に対する鬱屈とした苛立ちを持ち合わせた人物。
硬派な面とモラトリアムな面を併せ持つアンバランスな感じかな。
城戸の、茫洋としていて掴みどころのない、フラフラとした存在感が危うくて、見ている自分に置き換わってしまうような不思議さがある。
ウブなのか大胆なのか、ふざけているのか真面目なのかというような裏表がある行動は、当時、人気絶頂期のジュリーのイメージとオーバーラップしますね。
『太陽を盗んだ男』感想④:菅原文太
なんで、この頃の役者は皆揃ってこんなに凄いんだ。
演技はもちろんのこと、存在感が半端ない。
山下警部演じる文太の紳士的であり社会の秩序を守っていく実直な姿勢に好感が持てた。
城戸と関わっていくうちに歪んだ感情へと徐々に変化し、狂気に満ちた変貌ぶりにも引き込まれましたね。
ターミネーターも真っ青の追跡ぶりは凄まじい。
ジュリーにピストルの弾を何発くらっても、アドレナリン全開で無双化した文太はゾンビぶりを発揮して、最後は屋上から心中まがいのとこまで持っていくのは怖かった。
出典:https://www.tumblr.com/search/太陽を盗んだ男
『太陽を盗んだ男』感想⑤:カーチェイス
RX-7とコスモ。
この2台のカーチェースは日本映画最高のカー・アクションだと自負します。
沢田研二が乗るRX-7を追いかける菅原文太運転するコスモ。
横から出てきた牽引トレーラの上をジャンプするRX-7は圧巻。
後から追うコスモが、トレーラの下を強引に潜り抜け、ルーフが吹っ飛んでオープンカーになってしまう。
さらに、それを追いかけてきたパトカーはこれもド派手に衝突・横転。
この辺のシーンは大都会や西部警察を思い出す。
しかもこれ、一般の公道でやっている。
東京で、今このような芸当はまず不可能。
始めて見た時の感激といったらもう、震えましたね。
『太陽を盗んだ男』感想⑥:ゲリラ撮影
冒頭の『天皇に話がしたい』とバスジャックする伊藤雄之助が皇居前広場へのバス突入。
ジュリーが女装して国会侵入。
首都高での派手な追跡。
デパートの屋上からのビラ撒きなど、いやぁー見ている方がヒヤヒヤする。
ぶっつけ本番の臨場感が堪らない。
特に皇居前広場へのバス突入は、凄すぎ。
まとめ
アクションとドラマが融合された、無敵の映画。
中学校の教師が、たったひとりでプルトニウムを盗みだし、原子爆弾を作って、警察をおちょくる。
もうこの時点で、ぶっ飛んでますよね。
チョイ役に水谷豊・西田敏行ですよ。
なんという贅沢さ。
こんなすごい日本映画があったんです!
今では絶対に企画の通らない映画。
本当にいい時代でしたね。
今見ても新しく、カッコいい!
コレを見ないと人生損してしまいますよ。