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高倉健主演『野性の証明』のあらすじと感想をご紹介します

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ネタバレ含みますのでご注意ください。

日本映画に新風を巻き起こした角川映画の第三弾。

角川春樹が巨額の費用を投じた感動巨編。

設定、ストーリー展開に荒唐無稽なところがあって、突っ込みどころ満載なのは確かだが、画面から濃厚に漂う昭和のパワーに圧倒されて最後まで目が離せない。

金を賭けているだけに、キャスティングも豪華。

戦闘シーンや爆破、アクションなど迫力満点。

当時の時代を牽引していた角川書店の勢いを感じる。

そんな『野生の証明』のあらすじと感想をご紹介します。

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あらすじ

予告動画はこちらになります。 ↓ ↓ ↓ ↓

ストーリーは、自衛隊特殊工作隊による苛酷な訓練の模様から始ります。

そんな特殊工作隊に、出動命令が下ります。

それは、アメリカ大使とその家族が、別荘宅にて監禁されていた。

犯人たちの要求は、刑務所に収容されている仲間の釈放。

特殊工作隊の任務は、犯人たちを全員始末し、人質の救出。

隊長の皆川(松方弘樹)の合図で一斉に、味沢岳史(高倉健)を含む隊員たちが、ハングライダーで監禁されている別荘に向かいます。

隊員たちは、犯人たちを次々と始末していきます。

最後、リーダーの男(寺田農)を始末したのが、皆川であった。

そんな皆川の原動を隊員の味沢は、ただじっと見つめるのでした。

特殊工作隊に、新たな訓練が行われようとしていた。

それは、東北の山中において食料を持たず、生き抜くといったもので、特殊工作隊においては、非常時に備えサバイバル術が求められていたのです。

訓練に参加した味沢も生死を彷徨っていたところ、ハイキングに来ていた越智美佐子(中野良子)と出会います。

憔悴しきった味沢を救おうと、彼女は助けを求めに集落に行きます。

そこで、惨劇が起きてしまいます。

気が付くと、味沢は斧を手にしていた。

「おどーを、殺さねーでけれ!」と泣き叫ぶ少女の声が聞こえながらも、味沢は斧を振り下ろします。

12名の村人が殺害され、その中には美佐子もいました。

事件に居合わせた少女の行方がわからないでいたが、その後、別の集落で発見されたとの連絡が入ります。

現場近くの畑で、南部病と呼ばれるいわば風土病を起こすバクテリアが発見される。

保護された少女・長井頼子(薬師丸ひろ子)は、口をつぐんだままでいた。話すことと言ったら、青い服を着た男が、父親を殺したと語るのみだった。

頼子の状態を危惧し、医師による診察が行われ、その結果、選択性健忘症と診断される。簡単に言えば、思い出したくない記憶を意図的に封印している一時的な記憶喪失。

頼子は、遠い親戚筋に引き取られます。

美佐子の身元を確認したのは、妹の越智朋子(中野良子)でした。

また、犯行現場近くの畑から、朋子は大場の一人息子成(舘ひろし)が率いる暴走族に襲われます。

たまたま通りすがった味沢が、朋子を助けます。

翌日、負傷をして入院している病院に朋子が見舞いに行く姿を刑事の北野(夏八木勲)が目にして、彼女の後をつけます。

朋子を出迎えた頼子を見て、驚愕する北野刑事。

頼子は突然、「誰かいる、ドアの後ろにいる」というので、朋子がドアを開けたところ北野刑事はすぐに隠れます。

北野刑事は、1年前東北の集落で起きた大量殺人事件の捜査で味沢を疑います。今回の事件に関して、自衛隊内では、味沢対する処分に意見が分かれます。

精神に異常がきたしたと判断しただちに病院に収容するべきたという意見に対し、反対したのが、味沢の隊長であった皆川でした。

味沢は特殊工作隊で携わった全ての事柄を他言無用することを条件に、自衛隊の除隊が認められた。

1年後、舞台は羽代市になります。
羽代市は東北の中でも有数の地方都市。

この街を一手に牛耳っているのが、大場一成(三國連太郎)。

政財界だけでなく、警察やマスコミまでもが、彼の支配下に成り下がっていた。羽代に住む市民は、大場の意向を無視することはできない状況でいた。

味沢は、羽代市で保険の外交員の仕事をして、頼子を養女として育てていた。

その頃、ダムから水没した車が引き上げられた。

運転席には、羽代新報の記者である立川の遺体が見つかる、

立川と同乗していたのが、ホステスに勤める明美であると判明されると、警察は立川の飲酒運転による事故と断定します。

味沢も、ちょうどその現場に来ていた。

数日前、明美の夫・井崎(梅宮辰夫)が、彼女に対して、6000万円の保険金を契約したばかりだからです。

味沢は、明美が運転していた車を調べたところ、プラスチックコンクリートを見つける。

特殊な工事に使用されるプラスチックコンクリートを確認するために、味沢はダムの近くを調べていたたところ、朋子がやってきた。

立川はお酒を一滴も口にすることができないので、無理にお酒を飲まされて殺された、だから明美は車には乗っていなかったと朋子は言います。

しかし、事件当日、羽代運輸の従業員が2人を目撃していると証言があるが、羽代運輸は大場一族が経営する会社。

立川は、大場の不正を暴くために調査をしていた。

そのため、立川は大場の指図によって、葬られたと朋子は思っているのです。この河川敷は、2年に1回の割合で台風の影響から川が氾濫し、住民は困っていた。

そこに目を付けた大場が、ただ同然で土地を買い占め、国から堤防建設の認可が下りると、土地の価格が大幅に値上がる。

立川はその不正を暴こうとしていた。

明美は、この堤防建設のどこかに隠されていると朋子は疑います。そして、味沢に大場の不正を暴くために、力を貸してほしいと頼みます。

警察は、集落で発生した大量殺人事件の捜査を打ち切ることにした。検視の結果、頼子の父親が、この南部病に感染したことが判明する。

脳内と脊髄系に寄生し、狂気に追い込まれた犯行と断定した。そうなると矛盾が生じ、頼子の父親は一体誰に殺されたのかという疑問が残った。

味沢は頼子と買い物をして、街を歩いていたところ、突然トラックを指さして、「お父さんを狙っている、怖い」と言います。

頼子の予言通り、トラックは、味沢目掛けて、突っ込んできました。頼子によって、危機をのがれることができた。

羽代新報の浦川(田村高廣)は、朋子が明美の遺体を見つけるために、堤防を掘ることを止めるように味沢に頼みます。

味沢は、朋子の自宅を訪ね、明美の遺体を探すために、堤防を掘ることを告げます。

そこで、正確な工事日程表が手に入らないか聞きます。

朋子は図面を持っていました。

自分も一緒に同行したいと言いますが、味沢は足手まといになると言って断ります。しかし、同行させなければ図面を貸さないと言われ、渋々同行を了承します。

豪雨の中、堤防を掘り起こして、ついに明美の遺体を発見します。遺体を車に乗せようとしたところ、待ち構えていた井崎たちが現れます。

朋子は捕らえられ、味沢も身動きが取れないでいたところ、北野刑事が応戦します。

北野刑事は、味沢の尾行をしていたのです。味沢はショベルカーに乗り込んで、井崎を追い詰めていきます。

しかし、そこで、朋子が飛び出し、味沢の暴走を止めます。警察やマスコミもさすがに放置することはできなかった。

大場の圧力によって、味沢は保険会社を解雇されてしまいます。大場は、味沢の腕を見込んで、近づき、自分の片腕となって働かないかと打診してきます。

味沢は、頼子の学校に呼ばれ、予知能力があるのではないかと言われ、一度専門の先生に診てもらうように勧められます。

診察をした結果、頼子にはやはり、予知能力がありました。

直感像記憶といって、過去に起こった出来事と現在出来事を直観的に統合し、あたかも予知しているように見えるとのこと。

これによって、頼子は予言をしていくことになります。朋子は、味沢に不当解雇で、保険会社に対して、訴えるように頼みます。

法廷で、大場の圧力によって解雇されたことがわかれば、これまでの所業を明るみにすることができると主張しますが、「自分には、やるべきことがある」と言って、味沢は、朋子と頼子を車に乗せて走り出します。

行き先はなんと、1年前の忌まわしい殺害現場の集落でした。

頼子は、友達の名前を呼んだり、家をさしたりして懐かしそうにいています。だが、かたくなに、かつて自分が住んでいた家を見ようとはしなかった。

味沢は、強引に頼子を家の中に連れ込みます。
すると、急に頭が痛いといいだし、頼子は気絶します。

帰り道、味沢は朋子に、事件の真相を語り始めます。

演習中、憔悴しきった味沢は、集落の山道に出て倒れ込み、ハイキングで通りすがった朋子の姉美佐子と遭遇します。

美佐子は集落に助けを求めに行きます。すると、そこでは頼子の父親が、村人たちを次々と斧で虐殺をしている場面に出くわします。

味沢が集落に駆けつけた時、父親は頼子を殺そうとしたので、斧を奪い、父親に斧を叩きつけたのでした。

話し終えると、味沢は朋子に「お姉さんを殺してしまったのは自分」だといって、詫びます。

その頃、朋子は最終手段として、原稿をすり替えて、新聞の印刷をさせ、大場の罪状を市民に告発するしようとします。

しかし、朋子の計画は、もろくも崩れさってしまう。

原稿の差し替えが最後の段階で気付かれたてしまったのです。
大場に仕える配下のものたちが動きます。

朋子の自宅が襲撃されます。

頼子が味沢に「お姉さんが殺される、助けてあげて」と言われ、味沢は、急いで駆けつけますが、すでに、朋子は亡くなっていました。

味沢は、頼子の身の安全のために千葉の実家に帰ることにした。汽車で脱出をはかろうとしたところ、大場の配下によって連れ戻された。

そこで、味沢は大場の申し出を断ります。

一旦、自宅に戻った味沢に、頼子は「大勢の人がお父さんを殺しに来る」と言い警察が家宅捜査にやってきます。

容疑は朋子殺害です。

刑事が頼子を襲ったので、拳銃を奪って逃走します。成明率いる暴走族に襲われるが、逆に成明を人質にし、河川敷に住む老婆の家に逃げ込みます。

だが、老婆は、首を吊って自殺をしていた。

その時、成明が味沢によって人質となったことを知ると、大場の配下がやって来て、成明奪還のために味沢に襲い掛かります。

味沢は、次々と大場の配下を殺していきます。
いつのまにか、北野刑事も駆けつけていた。

味沢は、斧を手にして襲い掛かる敵に斧を振り下ろします。
その瞬間、頼子はすべての記憶を思い出します。

「あの男が、お父さんを殺した」と告げ、呆然とする味沢に、北野刑事は手錠を掛けます。

北野刑事は、管轄とする警察署に移送しようと試みます。ちょうど羽代市の山間部において、自衛隊の演習が行われていた。

北野刑事が運転していた自動車は、特殊工作隊員渡会(原田大二郎)によって止められます。

自衛隊の機密事項とされている特殊工作隊のことを知り尽くしている味沢を始末する命令が渡会に下されたのです。

渡会は、味沢だけでなく、頼子や北野もこの演習地で抹殺するつもりだった。

北野野刑事は、戦車に車に突っ込んで自爆する。
頼子も狙撃され、息を引き取った。

死んだ頼子を背負ったまま味沢は、戦車の群れに向かい銃弾を放ち続けた。

高倉健は最高です

味沢役の高倉健は、寡黙で漢気オーラをたっぷりと堪能できて最高。

死んだ薬師丸ひろ子を背中に抱え、単身で拳銃片手に襲い来る戦車に向かっていく健さん!

任侠映画の殴り込みじゃないんだからとか野暮なことは言ってはダメ。
健さんの映画はこれでいいんです。

そもそも、この映画は高倉健でなければ、成立しない映画なんだから。

エンドロールの映像に本編に使われていないもので大変印象に残る場面がある。

仕事から帰宅した健さんに薬師丸ひろ子が、ぬいぐるみを前に話しかけ、健さんがおどけているシーン。

なんとも仲の良い親子のようで微笑ましい。

健さんが薬師丸ひろ子の誕生日にラジカセをプレゼントとして贈って、コミュニケーションをはかり、撮影に臨める環境造りに気を配ったというのを何かのインタビューでみました。

男の生き様をそのまま体現する。

芝居とは所詮フィクションだけど、その中にリアルがある。

役柄と同じく健さん御本人もお優しい人柄だと感じます。

引用元:https://pablo.click/tv/news/12275/

薬師丸ひろ子の存在感

薬師丸ひろ子は一般公募から、オーディションで頼子役を選ばれた。

そのオーディションも、角川春樹がゴリ押ししたとのこと。

それ以降も、原田知世を発掘したりと、さすが先見性があります。

『野性の証明』に出演した当時の薬師丸ひろ子は13歳から14歳。

映画のエンディングでは、彼女のあどけなさがクローズアップされていて、薬師丸ひろ子がメインのアイドル映画という見方もできますね。

中学生なんだけどどこか幼児性な演技をオーバー気味に演じ、それが、予知能力が使えるというちょっと不思議なキャラを見事に表現しています。

でも、一番印象に残ったのが、目力が強烈なところです。

最初の虐殺シーンでの表情は、『タクシー・ドライバー』のジョディ・フォスターと共通する輝きを持っています。

これだけでも、彼女がスター性を持っていることが垣間見れます。

『野性の証明』と『ルパン三世/カリオストロの城』の共通点とは?

『野性の証明』で音楽監督をしている大野雄二は、79年宮崎駿監督の『ルパン三世/カリオストロの城』においても、音楽を提供している人です。

アクションにおける躍動感あふれる効果音や、シリアスなシーンにおける悲しげな旋律など、曲のテンポや使い方が共通している部分が多い。

『野性の証明』と『カリオストロの城』は、キャラクター設定においても、共通する部分があります。

実直で不器用な健さんと器用に立ちまわりズル賢いルパンとではまったく異なる主人公。

しかし、少女を前にすると、2人ともうまく自分を表現することができなくなるといった部分が共通しています。

他のキャラクターでいうと、カリオストロ伯爵は、大場を演じた三國連太郎と雰囲気がよく似ており、薬師丸ひろ子はクラリス、中野良子は峰不二子、夏八木勲が銭形警部といった感じです。

偶然の産物だと思うけど、こうして比較してみると面白い。

『野性の証明』は原作とかなり違います

『野性の証明』は原作とは、かなり違います。

ラストにおける自衛隊との対決は映画オリジナルのストーリー。

でも、そういったダイナミックなところが非常に映画的で面白かったりします。

アプローチの仕方も違っていて、映画では味沢が無差別殺人の犯人なのかどうかは、早い段階で解明され、それ以降のドラマに焦点があたっている。

それに対して、原作では味沢という男がどのような人物であるかに焦点を当てて、その謎を基調としています。

この部分がメインだと、映画的にみて、面白味に欠けましたし、味沢というキャラクターに魅力が充分ではないので、個人的には、もう一歩といった感じです。

映画『野性の証明』は、スケール感と、ストーリーの起伏の付け方がとても映画的で魅力に満ちています。

例えば、集落を襲った惨殺シーンは首が飛び、バイオレンス描写は効果的で強烈なインパクトを与えた。

オープニングから中盤にかけて、健さんと中野良子VS三國連太郎の対立を軸にしての展開がとてもよかった。

そして、後半に入り、敵が特殊部隊とシフトしていき、スケールが拡大していく。羽代市を牛耳っていた大場が、最後に壊滅することがなく、息子の舘ひろしだけが死んで終わってしまう。

しかし、これは「絶対的な権力には逆らうことができない。」という監督のメッセージと捉えることができる。

中野良子演じる新聞記者も、組織に楯突きたことによって、葬られたしまった。夏木勲演じる刑事も、警察の方針に逆らって、自ら戦車に突っ込んで自爆した。

主人公の健さんも、国家権力という手も足も出せない巨大な敵に対抗しようと薬師丸ひろ子の亡骸を背負いながら、突き進んでいく。

強大な力に逆らった場合、代償は伴うということを主張したかったのかもしれない。

だからこそ、健さんが中野良子を助けるために、応戦せずに暴走族から彼女を守りととしたことが、お互いの心に惹かれあったとすると、なんとも皮肉が込められたラストにも感じられた。

どうあがいても、野性の掟には逆らえない。
これが「野性の証明」のテーマとなっている。

豪華キャストに感動

正義感が強くて真面目、それゆえに特殊部隊の存在に苦悩する北野刑事役の夏八木勲。

街のボス大場の不正を暴こうと命をかける新聞記者の中野良子。

方言丸出しの田舎ヤクザに梅宮辰夫。

まだ、石原軍団に入る前の舘ひろし。

味沢を評価しながらも殺さねばならない宿命を持った松方弘樹。

強面を束ねて、街を支配する黒幕・大場に三国連太郎。

丹波哲郎は、『Gメン』の黒木警視と同じノリで自衛隊の幹部を演じているのが面白い。

その他に、田村高廣、成田三樹夫、寺田農なんかは、安定した演技が良かった。

後、悪役を演じている顔ぶれが勢ぞろいしている。

この濃い役者を見てるだけで、お腹一杯です。

まとめ

メディアミックスを使って、大量に広告を流して認知させた状況で、『野性の証明』は公開された。

「お父さん、怖いよ」とか「Never Give Up」といったキャッチコピーも流行語になった。

監督は高倉健と組んだ『新幹線大爆破』、『君よ憤怒の河を渉れ』などの佐藤純彌。それと、一般公募から選ばれた薬師丸ひろ子のデビュー作でもあります。

本作は東映と組んだことから、松方弘樹、梅宮辰夫、金子信雄、成田三樹夫といったお馴染みのメンツが集結。

全体的なストーリーは、ざっくり言って、前半はサスペンス、後半は健さんが無双化してランボーのように戦うといった感じ。

今の感覚で見ると荒唐無稽に感じるかもしれないが、このB級映画ぽいところが堪らない魅力です。

自衛隊も全く協力しない状況で、大量の戦車やヘリを一体どうやって借りてきたのか。お金の掛け方が派手なのは今見ても分かります。

日本の映画が低迷していた時期、間違いなく牽引していたのが角川映画。改めて、凄さを実感することができます。

邦画も捨てたもんじゃないです。

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