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殺陣がスゴイ!!『椿三十郎」ネタバレ感想

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ネタバレ含みますのでご注意ください。

黒澤作品の魅力って、映画の完成度が高いこと。

『七人の侍』はまさにそうですよね。

この『椿三十郎』は語り口の面白さが、際立っている。

コミカルな部分も多く、それが実にシャレて知的ですね。

仲代達矢・加山雄三・田中邦衛など、みんなイキイキと演じていて、充実感がこっちにまで伝わってくる。

「とても面白かったー!」感は確実。

何度観ても飽きのこない力強いチャンバラ映画。

エンターテーメントの代表のような作品ですね。

そんな『椿三十郎』のあらすじと感想をご紹介します。

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あらすじ

ある城下町の夜、一目を避けて神社の社殿で九人の若侍たちが、お家の一大事とばかり上役の汚職を告発しようとしていた。

若侍たちの中でリーダーにあたる井坂伊織(加山雄三)は、汚職に関する意見書を叔父の城代家老・睦田(伊藤雄之助)に見せたところ破かれてしまう。

その為、大目付の菊井に汚職の件を相談し聞き入れ、同志を集めてこの社殿で会うことになっていることを仲間に伝える。

そこへひょっこりと社殿の奥から姿を現した浪人者(三船敏郎)が、井坂が話した内容をすべて聞いていたことを明かす。

お家騒動の黒幕は、大目付であると指摘する。

間もなく社殿の周りは菊井の懐刀である室戸半兵衛(仲代達矢)が率いる家来によって包囲されてしまう。

浪人の機転により、難を逃れた若侍たち。

しかし、今度は城内家老の身が危ないことを察知した浪人は、一同を連れて、城内家老の屋敷へと向かう。

予想通り、屋敷は菊井の手下たちによって押さえられていた。

睦田は屋敷にはおらず、どこかに連れ去られていた。

菊井たちは汚職したことを睦田に罪を負わせることを企む。

手薄になった見張りの隙をつき、睦田の妻と娘を助ける。

汚職した一人次席家老・黒藤(志村喬)の屋敷の隣に住んでいる若侍・寺田(平田明彦)の家を拠点として構える。

黒藤の屋敷から、椿が目に留まったことから、睦田の妻から名を尋ねられた浪人は椿三十郎と名前を言う。

睦田の監禁場所が特定できず焦る若侍たち。

菊井たちも一筋縄ではいかない睦田に手を焼いている。

そこで、若侍たちを誘い出すために偽の情報を広める。

三十郎の警告を制して、行動に出る若侍たち。

三十郎が睨んだ通り、菊井の罠だった。

間一髪のところで罠と分かって、自分たちの行動に恥じる。

三十郎は室戸から社殿での出来事の際、誘われていた経緯を使い、睦田の居所を掴むために接触をはかる。

ところが、三十郎のことが信用しきれず、保川(田中邦衛)らが尾行し捕らえられてしまう。

三十郎の計画は失敗に終わる。

捕らえられている保川らを助けるために菊井の家来を始末し、彼らを逃がす。

寺田の家で対策を立てる中、黒藤の屋敷から流れる川に井坂が睦田に渡した意見書の破片があることに気づく。

睦田が黒藤の屋敷に監禁されていることを確証した一同は、三十郎の策によって実行に移す。

三十郎が室戸に若侍たちは城下から離れた寺に潜伏していることを伝え、黒藤に控える家来を移動させる作戦。

襲撃の合図として、椿が川に流れてきたら踏み込む手はず。

三十郎は計画通り、室戸に話し家来たちは移動し、襲撃の合図の椿を集めていたところ、室戸に見つかり捕らわれてしまう。

そして、寺に潜伏していることも嘘であることがバレる。

室戸が家来たちを呼び戻すために屋敷を出ていった。

三十郎は間もなく、屋敷は襲撃されるので、それを止めるには白の椿を集めて川に流す嘘のことを伝える。

菊井たちが流した椿の花を合図に若侍たちは屋敷を襲撃し、睦田を救出する。

後日、若侍たちに感謝をいい、事の顛末を伝える。

そこに三十郎の姿はなかった。

三十郎の後を追う井坂たち。

三十郎に追いつい彼らの前には室戸もいた。

室戸は三十郎に騙されたことを非難して、決闘を申し出る。

三十郎の素早い居合抜きで室戸を斬り捨てる。

三十郎は若侍らを後にし、その場を去る。

『椿三十郎』感想①:三船敏郎

三船敏郎の格好良さと存在感は群を抜いていてカッコイイ。

余裕を兼ね備えた、優雅で味のある雰囲気も格別。

若侍たちのために助太刀し、三十郎の物事を俯瞰して捉える洞察力は冴えていることとは対照に、あまりに頼りなく、常に足を引っ張る若侍達には、イライラしてしまいますが、この対比があるからこそ、三十郎がより引き立っている。

あえて無駄な血を流したことに対して若侍たちに「余分な殺生させやがって」とビンタします。

実際の撮影現場においても、若侍役の俳優たちがこっそりラーメンの出前を頼んでいたのが彼に見つかっていてお灸をすえたとのこと。

2重の意味でこのシーンのビンタは意味があることを知って、撮影現場でも若手俳優の面倒をみていたんですね。

室戸半兵衛との駆け引きもみどころであります。

後はなんといっても、今でも語り継がれている伝説の仲代達也との一騎打ち。

逆手に持った太刀で居合抜きのように一気に仕留める殺陣シーンは壮絶で、見ていて体がこわばるほどの緊張感。

素晴らしい場面です。

『椿三十郎』感想②:ストーリー

開始5分で三十郎の存在感に魅了され、話を引き込ませるのは流石。

次々と起こる難題を三十郎の知恵で切り抜ける展開は、見ていて気持ちがイイ。

ストーリーも単純明快で、無駄と思えるシーンも一切なく、サクサクと小気味よく進んでいくので大変見やすい。

冒頭で「てめぇらのやる事は危なくて見ちゃいられねぇ!」と三十郎が味方になるシーンは最高。

椿の花びらを川に流して、合図を出す。

敵陣営が隣同士というのも緊迫感があり、江戸時代の家屋の構造を最大限に生かした設定が、ストーリーの鍵となる椿につなげていく脚本は秀逸。


出典:https://www.pinterest.jp/pin/325807354275051396/?lp=true

『椿三十郎』感想③:設定

江戸時代は今の日本と同じく、平和であるという設定。

武士であっても刀を使うことは限られている状況。

そのことから、緊張感が乏しいですよね。

九人の若侍の詰めの甘さや先見のなさ。

城代家老の奥方の人柄がおっとりしていて物語に緩急をつけていて私はとても好きですね。

そして、最後に登場する城代家老の睦田。

彼のほんわかとした人柄が、この藩の性格を表していることに気づく。

それによって、若侍たちに感情移入し、奥方の癒し効果が藩全体を覆っていることに愛おしさを感じる。

現代社会においては、ギスギスとした職場環境が多い中で、少し羨ましく思う一面であります。

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まとめ

『七人の侍』に驚愕して、黒澤監督にハマり、多くの作品を観るようになった。

その中で、娯楽性に富んで、よくできていると驚いた作品が『椿三十郎』

ラスト三船敏郎と仲代達矢の殺陣についての脚本は、『筆でも書けない』と書かれていた。

撮影現場を見た人の中には、本当に刀で切ってしまったと見間違いするほどの迫力があったと黒澤監督は回顧していますが、それまでのコメディー要素を含んだ内容から一変してしまうほどの凄まじい迫力。

残念ながら、リメイクされた織田裕二版も鑑賞しましたが、余りにも格が違い過ぎて、逆にかわいそうになってしまうぐらい。

この迫力を超える殺陣は、今後生みだされることはまずないでしょうね。

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