ネタバレ含みますのでご注意ください。
文句のつけようがない、数ある映画の中でも、金字塔ともいえる傑作。
時代を超越して、長く親しまれる理由として、挫折や孤独といった男の悲哀をリアルに体現して、説得力があります。
「家族を大切にする」、「人の上に立つ者は、全責任を負う」といった信念は、何度観ても心に突き刺さる。
男の生き様を教えてくれる映画ですね。
どのシーンも印象的だけど、その中で一番心に残るのがラストシーン。
ケイがマイケルにカルロを殺害したことに対して詰め寄るが、関与していないとウソをつき、ファミリーがやって来て部屋を離れたケイが部屋を覗き込むように見るとドアが閉じられる。
この時を境にして、マイケルは、孤独な人生を歩むことになる。
つまり、マイケルがいる世界とケイのいる世界が、別であるとハッキリと示されていて、余韻が残り、さすが名作だと思います。
そんな『ゴッドファーザ』のあらすじと感想をご紹介します。
目次
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あらすじ
舞台は1945年アメリカ・ニューヨーク。
ドン・ヴィトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)の屋敷では、娘コニー(タリア・シャイア)とカルロ・リッツィ( ジャンニ・ルッソ)の結婚式がにぎやかに行われている。
そんな中、ある男がヴィトーに助けを求めにきた。
男の娘が付き合っていた彼氏に暴行を受け、復讐をしてもらいたいというのです。
ヴィトーは、イタリアから移民してきたアメリカ人で、政治家と人脈を多く持ち、多大な影響力を持っているマフィアのドンです。
この依頼している男は、アメリゴ・ボナセーラ(サルヴァトーレ・コルシット)といって、葬儀屋を営んでいる。
ヴィトーはボナセーラが自分に対して敬遠していたことを批判するも、ボナセーラが忠誠を誓い謝ると用件を引き受けた。
三男のマイケル(アル・パチーノ)は彼女のケイ(ダイアン・キートン)を連れて参加していた。
そこで、マイケルを目にすると、兄弟たちが2人に挨拶を交わす。長男のソニー(ジェームズ・カーン)は、気性が激しく荒っぽい。
血のつながりはないが、ヴィトーの息子同様家族として接し、コルレオーネ・ファミリーの弁護士でもあるのトム・ヘイゲン(ロバート・デュヴァル)の紹介をマイケルはケイに話す。
マイケルは、父や兄たちの稼業には興味がないことを説明し、安心させようとしていた。
ヴィトーにおいても、マイケルには、マフィアの世界には関わらせたくない考えでいた。
また、ヴィトーに名前をつけてもらって、歌手として活躍しているジョニー・フォンテーン(アル・マティーノ)が、ボナセーラと同様に頼み事をしにやってきた。
ジョニーは女癖が悪く、手塩に育てた女優に手を出したことから、映画プロデューサーが激怒し、彼の出演が拒絶されている状況。
そこで、弁護士のトムが映画プロデューサーのジャック・ウォルツ(ジョン・マーリー)の元を訪れ交渉するが、頑なにジョニーには役をやらせないと強気な態度を取る。
トムはあえて粘ることはせず、帰ったかのように思えたが、あくる朝、ウォルツのベットの中に、彼が大事に育てきた種馬の頭が血だらけになって置いてあった。
引用元:https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=VC1_tdnZq1A
ウォルツはコルレオーネファミリー怖さを思い知らされ、ジョニーは念願かなって役
を手にすることができた。
後日、ヴィトーの元にソロッツォという男が現れた。ソロッツォは麻薬を使ったビジネスをヴィトーに持ち掛ける。
ヴィトーが政治家と顔が効くことから利用させてもらうことと引き換えに莫大な見返りを提案。
けれどもヴィトーは破格の条件を出されたにも関わらず麻薬は人を破滅させるものであって、何があろうとも関わる気はないと申し出を断った。
ヴィトーはソロッツォのバックについているタッタリアファミリーに不穏な感じをうけて、ファミリーの一人であるルカ・ブラージ(レニー・モンタナ)をタッタリアファミリーに探りを入れるよう命じる。
しかし、タッタリアはルカに儲け話をもちかけ、油断したその隙に不意を突かれ、ルカは殺されてしまう。
さらに、ヴィトーが町中で1人になったところを狙われ、銃弾を5発も撃たれ、辛うじて命は助かったものの予断を許さない状況で、ヴィトー襲撃の事件は新聞にも掲載された。
ちょうどマイケルも新聞記事を目にして急いでヴィトーの入院している病院へと向かった。
しかし、駆け付けてみると病院には警護しているものが誰もいない状況。
このままだとまた刺客によってヴィトーが殺されかねないと判断したマイケルはヴィトーを別室に移動させる。
ちょうど見舞いにきた男を使って警戒させ、マイケルの思惑通り刺客が現れるが、威嚇して追い払った。
そこへソロッツォに買収されたマール・マクラスキー警部(スターリング・ヘイドン)がやってきた。
「直ちに去れ」とマイケルに詰め寄り、反抗するマイケルに対して殴りつけた。
ヴィトーが襲撃されたことに、激怒したソニーは、タッタリア息子・ブルーノ・タッタリア(トニー・ジョルジオ)を殺害する。
それから後に、ソロッツォの方から、手打ちにしたいと打診が持ち掛けられる。ソロッツォはマクラスキー警部と同伴で、マイケルと会談を行い和解しようという考えだ。
今まで、マフィアに関しては、距離を置いていたマイケルであったが、なんと自らこの2人を始末すうることをソニーたちに提案する。
ソニーはマイケルの言動に笑うが、本気であることに気づくと、会談の場所となるレストランを突きとめさせ、あらかじめレストランのトイレに拳銃を隠し、マイケルがトイレで席を立ち、拳銃を入手して2人を殺すという作戦で会談にのずむ。
マイケルがためらいもなく、ソロッツォとマクラスキー警部を殺し作戦は成功する。
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=ppjyB2MpxBU&t=8s
報復から逃れるためにコルレオーネファミリーは各々が身を隠した。
長男のソニーはニューヨークに留まり、次男のフレド(ジョン・カザール)は故意にしているラスベガスのマフィアの元に匿われ、三男マイケルに至っては、首謀者であったことから、ヴィトーの故郷でもあるイタリアのコルレオーネ村へと身を潜めることとなった。
一方、ヴィトーにおいては、意識を取り戻し、歩けるまでに回復していた。
暇を持て余していたマイケルの前に、偶然道端で目にした女性アポロニア(シモネッタ・ステファネッリ)に一目ぼれする。
そして彼女の父親と面談し、結婚することを強引に口説いて、認めさせる。
その頃、アメリカではソニーに悲劇が起きる。
妹のコニーは夫のカルロとケンカになって暴力をふるわれ、そのことでカルロは、ソニーによってヤキをいれられる。
今回もまた些細なことからケンカになり、コニーはソニーに相談したところ、懲りないカルロに制裁を加えようと出かけた際、高速の料金所で待ち構えられていて集中砲火を浴びて即死。
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=sJU2cz9ytPQ
なんと、マイケルにも刺客が現れ、彼の所有する車に爆弾が設置されていた。
ちょうどアポロニアが車に乗った瞬間に爆発し、アポロニアはマイケルの犠牲となって死んでしまう。
ソニーが無残に殺されたことで、ヴィトーは、葬儀屋のボナセーラを家に呼び、流血に染まったソニーの遺体を拭き取って綺麗にしてほしいと頼んだ。
その後、ヴィトーは、5大ファミリーを集めて会合を行い、和平交渉を持ち掛ける。
ヴィトーはタッタリアと揉めた代償で、お互いの息子を失い、「もう終わりにしよう」という。
だが、ヴィトーは、頑なに麻薬に関与することを認められないと反対するが、最後は折れて条件を受け入れることにした。
それとヴィトーは条件としてマイケルをアメリカに戻すことを受け入れてほしいと頼み、同時に手を出すようなことは絶対に許さないといった。
ヴィトーは会合の様子から、麻薬取引を推し進めるバルジ―ニが、今回の抗争を引き起こした黒幕であることを確信する。
ようやくマイケルはアメリカに戻ってくることができのだった。
ヴィトーはソロッツォの件で、ファミリーの後継者に最もふさわしいのは、トムやフレドではなくマイケルだったと考えていた。
そしてマイケルは、ヴィトーの後を引き継ぐこととなる。
今まで、マフィアの世界とは距離を置いていたマイケルが、皮肉にもファミリーを率いていくトップとなってしまったというわけです。
また、マイケルは事件で疎遠になっていたケイの元へ再び顔を見せ、プロポーズして結婚した。
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=voNs3aHZmQM
それまでのマイケルとは一変して、ファミリーの繁栄のために手腕を発揮していった。
ヴィトーは「バルジーニと会談を持ち掛けてくる人間が裏切るものだ」とマイケルにアドバイスをしていた。
そんな中、ヴィトーはマイケルの子供と庭で過ごしていた時、突然、心臓発作を起こして命を落とす。
ヴィトーの葬儀の時、クリメンザと同じくファミリーで古参のテッシオ(エイブ・ヴィゴダ)がマイケルに近づきバルジーニとの和平交渉を持ち掛ける。
これによって、テッシオが裏切り者であることがわかった。
これによって、マイケルは5大ファミリーのドンの暗殺を決意する。
コニーとカルロの子供の洗礼式の日、バルジーニ、タッタリア、クネオ、ストラッチ、モー・グリーンと次々ファミリーの手によって殺される。
引用元:https://www.youtube.com/watch?time_continue=51&v=1CDlBLvc3YE
他にもソニーを殺害するためにコニーとケンカを装って、単身で外出するよう仕組んだカルロとテッシオを殺害する。
カルロがマイケルの指示によって殺されたと疑うコニーはマイケルに詰め寄る。
その様子を目にしたケイはそれが本当なのかとマイケルに問いかけるが、嘘だといってマイケルはケイをなだめる。
ファミリーの力はヴィトーの頃と比べて、更に大きくなり、ケイはそんなマイケルの姿に不安を覚え始めるのであった。
ソニーが殺された理由
麻薬ビジネスに悲観的なコルレオーネファミリーに敵意をもっているバルジーニーは、ファミリーの仕事に就けないで不満を抱いているカルロを使って、ファミリーの内情を連絡させていました。
バルジーニは、ソニーを1人で外におびき出すために、カルロにわざとコニーとケンカをさせます。
家庭を顧みないで浮気を重ねるカルロにキレて、コニーが兄のソニーへ連絡するだろうと考えます。
ソニーの性格は、頭に血が上ると感情を抑えることができず、後のことを考えずに行動する無鉄砲なところがある。
それを知って、度重なるコニーへの原動を知ったソニーが護衛もつけずに怒り狂って家を飛び出すことを読んでいたからです。
これによって、料金所で待ち構えていた暗殺者たちは、自宅からコニーの家までのルートをあらかじめ知っていて事前に計画していたことが解釈できます。
結婚式におけるルカの違和感
冒頭コニーの結婚式で、ヴィトーに挨拶をするルカ。
滑舌がよくない理由は、役者としてはズブの素人だからです。このルカを演じたレニー・モンタナはプロレスラーでした。
余りの緊張からセリフを「限りない忠誠を」が「限りある忠誠を」と何度も間違えてしまったとのこと。
結婚式というめでたい席に自分のような人間が招かれ、ヴィトーとの面会が許され、緊張して凝り固まっていると設定を変えてしまったのですね。
また、ルカの設定は、ファミリーにおける汚れ仕事専門の男で、仲間内から嫌われている存在として描かれいる。
それで、コッポラ監督が整合性をあわせるために、何度も挨拶の練習をしているシーンが追加されたそうです。
ルカがヴィトーに対する忠誠心が現れ、まさにケガの巧妙ですね。
カルロはコニーのことを本当に愛していたのか?
実際にコニーのような女性はよくいますよね。
収入や外見だけで結婚相手を選んでしまい、結婚した後、本性がわかって後悔するパターン。
それどころか、心の奥底では「私を愛してくれている」と解釈しているので、離婚するなんてことは到底考えも及ばず、ただひたすら暴力に耐えている。
本来、カルロはコニーのことが好きで結婚したわけではなく、ファミリーの権力に惹かれた調子のいい軟派男ですからね。
コニーにとってはかわいそうだけど、カルロの本心を見抜くことができなかった彼女にも非はあるのかな。
自分を守ってくれる家族に囲まれて育ったせいもあって、世間を知らなかったのかと思う。
カルロは、自分がファミリーの仕事を任せてもらえないことにずっと不信感を持っていたんでしょうね。
それが彼の「俺にだって出来る」というプライドにバルジーニがつけこんでいいように使われてしまったものと考えられる。
仮にソニーがファミリーを引き継いでいたらどうなっていたか?
『ゴッドファーザ』において、抗争の引き金になったターニングポイントは、ソロッツオがヴィトーの人脈を活かして、麻薬を供給して、一緒に稼ごうと打診するところ。
このビジネスにヴィトーは拒否反応を示します。
しかし、ソニーは、麻薬ビジネスに未練があって、ヴィトーに再度話を持ち掛けるが、「麻薬は人を破滅に導く恐ろしいもので、絶対に手を出すことを認めない」と断ります。
それが原因で、後日、ヴィトーへの襲撃が起きた。
妥協して麻薬ビジネスに手を貸していれば、後に繰り広げられる抗争は避けられたかもしれない。
仮に麻薬ビジネスに関与したとして、マイケルが手掛けたラスベガスのホテルを買収して、カジノを運営するといった路線変更はまずソニーには無理でしょうね。
彼の性格からいって、より過激にイケイケの状態になり、抗争もより壮絶なものになっていたと思う。
テッシオがファミリーを裏切った理由
ヴィトーがマイケルに「バルジーニとの会談を持ちかけてきたものが裏切り者だ」と忠告しました。
裏切り者がテッシオであると判明するのが、ヴィトーの葬式です。
マイケルはどちらかというと、テッシオと同じ地位にあたるクレメンザにファミリーの裏切り者を始末する役割を任せていたことから、はっきりとはしていないものの、ある程度確信していたと思います。
テッシオは、ファミリーのドンがマイケルに変わり、ヴィトーとは考えが合わずそれを見越してヴィトーに諭されて渋々従っていた。
そんな中、ヴィトーが死んで、見切りをつけて、バルジーニに寝返った。
実際に同族会社で、2代目の社長とウマが合わずに、条件の良い会社に転職するのは普通ですからね。
個人的な恨みからではなく、ビジネス目的によるもの。
だから、面倒なことを避け、仲違いしている者同士を和解させ、自分の保身を最優先させる典型的な裏切る人間のパターンですね。
味方の中で親切ごかしにいち早く敵との和解を持ちかけ仲介者になろうとするものこそ裏切り者であるのは世の常ですね
それにしても、相手の心理を見抜くヴィトーの洞察力は、人間の懐の深さを感じます。
まとめ
『ゴッドファーザー』は、イタリア系マフィアのドンの生き様を描くシリーズの第1作。
冒頭における結婚式の晴れやかなシーンとは裏腹に、マフィアのダークサイドがクローズアップされ、バランスが絶妙です。
もう、この出だしから引き込まれ『ゴッドファーザ』の虜になること間違いなし。
一人一人のキャラも立っていて、群像劇として様々な立場からストーリーが展開していくので、全く飽きない。
特にマーロン・ブランド演じるヴィトーの存在感は圧巻。
坊ちゃん風情のマイケルが、次第に冷酷無比なマフィアのドンと変わっていくアルパチーノの演技も捨てがたい。
フィクションではあるけど、実在したエピソードを脚色しているので、マフィアの世界がリアルに伝わってくる。
本作は、マフィアの世界をとおして『家族愛』をテーマとしていいるので、人としての生き方、信念というものを観る度に新たな気づきが得られます。
上映時間が3時間と長いけど、テンポがよく、中だるみもないので、未見の人は、躊躇しないで鑑賞することをおススメします。