ネタバレ含みますのでご注意ください。
『時計じかけのオレンジ』は、エロ・グロ・バイオレンスが見事に結合し、芸術的に昇華させた作品といえます。
また、近未来をイメージしたビジュアルの奇抜さは、今見てもまったく古さを感じない。
そして、効果的に使われた音楽もセンスが伺えます。フランク家に襲撃した際に、『雨に唄えば』をアレックスに歌わせ、狂気を見事に表現した。
更に、アレックスが洗脳されるシーンにおいては、ベートーヴェンの『第九』が電子音楽によって編曲され、独特の世界観を演出している。
総じて、アレックスの歪んだ性格と、それを洗脳し、国家の言われるがままの人間に造り替えてしまう暴力性を描いたある種狂った映画です。
これは、現代社会に対する問題点を痛烈に批判をしている風刺があります。
だから、私は好きですが、娯楽映画のように気分がスカッとするような、万人受けする映画ではないので、好みが分かれるのもしょうがないのかなぁと思います。
そんな『時計じかけのオレンジ』のあらすじと感想をご紹介します。
目次
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あらすじ
舞台は近未来のイギリス・ロンドン。
アレックス(マルコム・マクダウェル)は、ミルクバーにて、ドラック入りのミルクを飲みながら今夜の計画を考えている。
アレックスは、ジョージー、ディム、ピートを率いて『ドルーグ』と名乗るチームを組んでいた。
彼らお揃いのコスチュームは、白のブラウスにパンツスタイル。吊りベルトも白で統一。そして、皆黒い帽子を被っている。
早速、街に繰りだしたアレックスたちは、河原で醜態をさらしている、男を叩きのめします。
その後、廃墟となった劇場にて、女性に暴行をしようとしている『ビリー・ボーイ』たちを見つけ、彼らを叩きのめした際に、パトカー音を聞いたアレックスたちは、車を奪って逃走。
そしてたまたま目に付いた家に入り込むことを思いつきます。
「友人が事故で瀕死の重傷を負って救急車を呼びたいので電話を貸してほしい」とお願いされ、親切なフランク夫婦は家に入れてしまう。
そして、夫のフランクは、痛めつけられ、妻は口をガムテープでふさいで乱暴し、彼らはやりたい放題に振る舞います。
明け方に帰宅したアレックスは、ベートーベンの交響曲第9番ききながら眠りました。
彼は、クラシック音楽をこよなく愛し、なかでもお気に入りなのが、このルドウィヒ(ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーベン)の交響曲第9番なのです。
アレックスは母親に学校へは病気だと言ってサボります。パートに行った母親と入れ替わりで、更生委員のデルトイドが部屋にいた。
デルトイドは、アレックスが行っている所業をすべて把握しています。
『ビリー・ボーイ』のメンバーが病院に入院していることを告げます。
デルトイドは、アレックスのシッポを掴むために、常に目を光らせているのです。
レコード店に出掛けたアレックスは、そこで2人の女性をナンパして、自分の部屋に連れ込んでエッチします。
気分がスッキリした状態で、団地の階段を降りると、『ドルーグ』のメンバーが神妙な面持ちで待ち構えていた。
『ドルーグ』のリーダーはアレックスだが、そのことでチーム内で不満が起きているとディムが持ち掛けます。
しかしアレックスは、ジョージーがディムを使って、言わせていると見抜きます。自分がリーダーであると示すために、暴力による制裁が必要だと考えます。
平静を装っていたアレックスでしたが、隙が見えたところでディムとジョージーを川に落とし、自ら手を差し伸べディムの手をナイフで切りつけます。
改めて力を誇示したので、反乱は収めたとアレックスは思い込む。
アレックスは、ジョージーたちが今夜計画していたプランを実行に移します。
大きな屋敷で、1人なに不住なく暮らすミス・ウェーザーズ家に襲撃を実行します。
いつものように「事故で負傷し救急車を呼びたいので電話を借りたい」と言うと、ウェーザーズは警戒して扉を開けません。
実は、今朝の新聞に同じ手口による犯行の記事が載っていたからです。断られたアレックスは、裏口に回って1人で窓から潜入します。
ウェーザーズは、新聞に載っていた犯人と同じ手口で家に訪ねてきた若い男がいると警察に通報します。
警察はパトカーを手配します答えます。
ウェーザーズが電話を切った瞬間、アレックスが部屋に押し入ってきました。数分でパトカーが来ることから、強気に出て、アレックスに攻撃をしてきます。
アレックスは飾っていたオブジェを使って反撃し、ウェーザーズの腹部を殴りつけ死んでしまいます。
パトカーが駆けつけ急いで逃げようと玄関を開けると、待ち構えていたジョージーとディムらによって、牛乳の瓶で殴られ倒れます。
残されたアレックスだけが逮捕されます。
これまで、悪事を繰り返してきたアレックスに対し、警察は手加減をしなかった。
ウェーザーズが死んだのは、不可抗力だと訴えますが、その後、裁判によって、14年の刑が下ります。
刑務所に収容されてから、2年の月日がたち、アレックスは模範囚となって、牧師の手伝いをしている。
そんなある日、アレックスはうわさで聞きつけた「ルドビコ式心理療法」について牧師に尋ねます。
この療法を受けることによって、短期間のうちに釈放されることがわかり、アレックスは興味を持ちます。
アレックスは自ら志願して、治療を受けたいと牧師に言いますが、この療法には、危険が伴うことから刑務所では反対していると言われてしまいショックを受けます。
その頃、刑務所を視察に内務大臣が訪れます。アレックスは、内務大臣にアピールします。
内務大臣がアレックスの原動が目に留まり、彼の罪状を調べ、ルドビコ療法をするにはうってつけの逸材だと思います。
重い罪を犯した人間が、更生した時の世間に与える影響力が効果的だと考え、内務大臣は、ルドビコ療法をすることに決めます。
治療が済むと、2週間で釈放されると知らされ、アレックスは喜びます。こうしてアレックスは郊外の病院に移送される。
ルドヴィゴ療法を提唱するブロドスキー博士の指示によって、アレックスはイスに縛りつけられ、強引に目を開かせた状態にさせられ、暴力的な映像を午前と午後2回に分け毎日繰り返し見せられる。
暴力描写の映像に使われている曲が、アレックスが好きなベートーベンの第九であることに気づく。
アレックスの変化が生じてきた。
暴力描写の映像を見ると気分が悪くなると訴えるが、更に治療は続く。
2週間の治療を終えたアレックスは、結果の成果を一目見ようと集まる人々の前に姿を現します。
一緒に現れた男に暴力や罵倒されて、反撃しようと試みると吐き気を催し、男の言われるがままに服従するアレックス。
次に下着姿の女性が現れ、アレックスを誘惑してます。感情が抑えきれなくなり、女性の体を触ろうとすると、同じく吐き気がする。
これらの結果を見て、アレックスが、治療によって更生したと言い放つ内務大臣に対し、牧師は「人間における選択能力を奪った」と厳しく抗議します。
当初の予定通り、アレックスは釈放されます。
自宅に帰ってきたアレックスに対して、家族の反応は複雑な心境であった。
それは、かつて自分が使っていた部屋を下宿人と称して、アレックスと同年代のジョーを住まわせていることからも伺える。
ジョーは挑発し、アレックスはキレて殴ろうとするが、気分が悪くなる。アレックスは自分の居場所がないことが分かると、家を出ます。
テムズ川を眺めながら考え込んでいると、金を恵んで欲しいと老人のホームレスが近づいてきた。
この老人はかつて、アレックスたちによって暴行を受けたことを思いだし、仲間がいる場所に引き連れて仕返しをする。
そこに通りがかった2人の警官にアレックスは助けられます。この警官はなんと、アレックスを裏切ったディムとジョージーであった。
2人はアレックスを手錠にかけ、森に連れて行き、顔を見ずにつけて警棒で殴りつけました。
痛めつけられた体で、雨が降り出し、助けを求めようと歩いて一軒の家にたどり着きます。
その家は、アレックスたちが、突然押し入って襲った作家のフランクの家でした。
アレックスの助けに、フランクは突然の訪問者の受け入れた。
アレックスは家の中に通されて、車いすのフランクの姿を見て、自分が暴行した相手であると気づきます。
フランクも、アレックスが出所したことは、新聞の記事で知っている。現在の政府に対して、反対派のフランクは洗脳されたアレックスを利用することを思いつく。
風呂に入らせてもらっているアレックスは、鼻歌を歌ってリラックスをしている。
歌声を聞いたフランクは、家に押し入って暴行を受けた際に口ずさんでいた声が同じであることから、アレックスがであることに気づきくと、怒りを抑えるのに必死だった。
フランクはアレックスに夕食を用意し、ワインを勧める。
態度が変わったフランクに違和感を持ったアレックスだがワインを勧められ飲みます。
フランクは同じ反政府の仲間に連絡をし、アレックスが家にいる事を話します。
仲間がフランクの家に訪れ、アレックスに色々と質問をし、次第にアレックスは気を失う。アレックスは目を覚ますと、ある部屋の2階に監禁されていた。
床下からは、大音量でベートーベンの第九が聞こえてくる。
ルドビコ療法によって洗脳されたことによって、第九を聞くと気分が悪くなり、耐えられなくなったアレックスは、2階の窓から飛び降りて自殺をはかります。
しかし、 アレックスは死ななかった。
意識不明の重傷を負い、病院に搬送されたアレックスは目覚めます。
政府はアレックスに施したルドビコ療法が失敗に終わったことによって、世間から非難にさらされている状況であった。
意識が回復したアレックスに対して、精神科医によるテストが行われていた。描かれている絵の人物が話すであろう言葉を感じたまま伝えるいうものである。
アレックスは、過激な言葉を連発する。
この結果をみて、順調に回復していると精神科医は判断します。
内務大臣がアレックスの病室に訪ねてきて、謝罪します。
それと今回の一件で、政府の信用が落ちてしまい、支持率回復のために協力の要請を求めてきました。
アレックスは了承し、内務大臣はマスコミを使って、アレックスと握手をする姿を撮らせ、起死回生を狙います。
内務大臣は、プレゼントして、豪華な音響設備を病室に設置させ、アレックスが好きな第九が堪能できる環境を用意します。
第九を聞きながら、女性とエッチしているところを妄想して、気分が悪くならないことからアレックスは、完全に元に戻ったことを自覚します。
なぜアレックスは洗脳が解けたのか?
アレックスが第九を聴いて、2階の窓から飛び降りた後、全身包帯で固定されてます。
実は意識が回復する間に、脳の手術を受けて、ルドビコ療法を受ける前の状態に戻っていたのです。
そのことがわかるのが「誰かが脳をいじくりまわしたような」というアレックスのセリフから解釈することができます。
アレックスが、政府主導の矯正プログラムにおいて、自殺未遂をしたことにより、政府の信用が下がるのを恐れて、脳手術を行ったわけです。
ルドビコ療法によって、植え付けられていた洗脳が解除され、アレックスは元の凶暴な青年に戻りました。
ラストカットにおけるアレックスの不敵な顔、第九を聴きながらエッチを妄想している、それらを見て、アレックスが完全に洗脳から解けたと表現されてます。
まず、洗脳が解けていなければ、あんな事考えることができないですからね。
内務大臣が、アレックスに望んでいたこととは?
妻を犯され、そのショックで死に至り、自分も痛めつけられ、車イスの生活を余儀なくされた作家のフランクは、アレックスが政府によって矯正された事を新聞の記事を読んで知ります。
洗脳によって、拒否反応を起こす第九を聴かせることで、自殺させるようにアレックスを追い込みます。
フランクは反政府勢力の人間で、復讐を兼ねてアレックスを自殺に追い込めば、政府主導で実践した政策を叩くにはうってつけの材料と目論んでいた。
しかし、アレックスは自殺に失敗し、命を取り留めた。
政府はすぐさまフランクを含むアレックスを自殺に追い込んだメンバーを逮捕すると共に、アレックスを矯正された状態から元に戻し、反政府勢力が行ったことに世間の非難が集中するように協力しろと打診するわけです。
結局、政府は自分たちの保身のために、アレックスを利用した。
政府の洗脳操作によって、一般市民が手のひらの上で踊らされているという痛烈な話ですね。
私の持っている「時計じかけのオレンジ」のB lu- rayは、米国のもの。本編には日本語字幕があるが、特典にはない…とずっと思い込んでいたのだが、いくつかある特典映像のうち、メイキングには字幕がついていた。
これを見ると、マルコム・マクダウェルが演じた主人公アレックスは、当初 pic.twitter.com/4uQugPMYDF— 三一十四四二三 (@31104423) 2018年2月9日
『時計じかけのオレンジ』のテーマを考えてみた
スタンリー・キューブリック監督の特徴として、1回観ただけでは理解することが難しいってことありますよね。
私にとっては『2001年宇宙の旅』がまさにそうだったように、この『時計じかけのオレンジ』も作品の意図を汲み取るのが人によって難しい作品です。
一見すると、確かに『時計じかけのオレンジ』は暴力映画にみえます。でも、暴力を単に描いているだけではないんです。
その理由は、アレックスは最初、札付きの不良少年です。
しかし、人を殺害して刑務所に収容されます。そこで、自分の意志によって、政府を推奨する矯正プログラムに参加します。
その結果、効果が現れ、暴力や性に対して吐き気を覚えます。その後、色々あって最後元に戻ります。
ここで、注目すべきは、ルドビコ療法を受けたところです。
ルドビコ療法は残虐性を帯びているアレックスを洗脳によって、強引に変えてしまうのもです。
すなわち、洗脳して無気力状態にしたことは、ある意味暴力に対するより強い暴力です。非常に攻撃的な性格を無理やりねじ伏せ封印させたと考えればわかりやすいと思います。
キューブリックは暴力を否定するために、あえて暴力描写を強調し、それに対する暴力で対抗しても、結局最後は何も解決しないということを伝えたかったのだと思います。
『時計じかけのオレンジ』が好きな理由
『時計じかけのオレンジ』は、感覚的な作品であることから、観る人によって、受け入れるか否かがハッキリと別れる映画なのかなと思います。
これは、映画を理解しているから偉いといった次元の話ではなくて、理屈を超えて要は好きか嫌いかで、判断すればいいということです。
この『時計じかけのオレンジ』そういう映画です。
私が『時計じかけのオレンジ』を好きな理由として、『2001年宇宙の旅』は未来を肯定的に描いたのに対して、『時計じかけのオレンジ』は否定的に描いているところです。
例えば、団地の内部は荒れ果て、アレックスの家庭は裕福で幸せそうに見えるが、手に負えない子供を放置している状態。
友人もお互い心を通わすことがなく薄っぺらな関係。
出てくる登場人物が、どれもみなモラルに欠けた嫌なやつばっかりで、どこか閉塞感に覆われている感覚が、今の日本と共通する部分があります。
今の世の中ってまさに『時計仕掛けのオレンジ』の世界観そのまんまですからね。
アレックスをとおして、退廃していく未来をキューブリックが予見しているという先見性はやはり、凄いとしか言いようがないです。
また、管理社会に対する痛烈な批判が心地いい。
特に、アレックスがラストで見せた「そんな簡単に性格なんて、変わんねーよ」と、鼻で笑うかのような表情は堪らないですね!
まとめ
『時計じかけのオレンジ』は、暴力描写ばかりが、先行しているけど、キューブリックが、未来を否定的に捉えていたとおり、現代の社会は見事に現実化している。
映画に登場した『ルドビゴ療法』なんていうやり方も、実際に行われるかも知れない。
悪い奴は、どんな処置をしても、変わらない。
そんな人間は、世の中確かに存在する。
矯正される前、アレックスの極悪非道ぶりを見ていると、罰を受けて、ボコボコにされ気分がスカッとするかと思いきや、洗脳された後、暴力を受けても無抵抗なアレックスが不憫に感じ、少し同情してしまった。
しかし、実際にアレックスのような人が身近にいたらどう対応すれば良いのだろうか。改心して、真人間となるのだろうか。
これこそ映画の醍醐味なんでしょうね。
色々と問題提起をしているキューブリックの凄まじい表現力に脱帽です。
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