リンキング(linking)とは、2個以上の単語をつなげて、1語のように発音する発声法です。
日常の英会話で頻繁に使われます。
簡単な例では、“can I”は、「キャンアイ」ではなく、「キャナイ」、“Thank you”は、「サンク・ユー」ではなく、「サンキュー」に近い発音です。
フランス語では「リエゾン」と呼ばれています。
リンキングが聞き取れるようになると、ヒアリング力が大きく向上します。
リンキングには、一定のパターンがあります。
決して難しいものではありません。
これから詳しく解説をしていきます。
目次
スポンサーリンク
子音+母音が結合
上記 “can I”のように子音で終わる単語の次に母音から始まる単語が続く場合、このパターンになります。
母音で終わる単語でも、その母音を発音しない場合は、このパターンに入ります。
このパターンは、最も頻繁に現れるリンキングです。
リンキング後の発音に近い音をカタカナで示しますので、実際に早口で発音して確認して下さい。
an animal ➡ アナニマル(穴に丸)
Look at it. ➡ ルッカッティッ(最後の「t」は、口の形だけ「t」にして、発音しない)
What is it? ➡ ワッティズィッ(同上。3語のリンキングです)
work out ➡ ワーカウト
Get out. ➡ ゲッダウト (tはdに代わります)
Should I …? ➡ シュダイ…
Even if … ➡ イヴニフ…
He had a good experience. ➡ ヒハダグーデクスペリエンス(2か所リンキングします)
I make a cake. ➡ アイメイカケイク (makeは、母音で終わりますが、発音は子音)
…t+母音の場合、tがrまたはdの音に変化する場合があります。
not at all ➡ ナラロー (2回繰り返されています。「ノダオール」という言い方もあります)
but also ➡ バロルソ
out of ➡ アウロブ
put it on ➡ プリロン (2回繰り返されています)
that I ➡ ザダイ (語尾がtまたはdの場合、消滅する場合があります)
and I ➡ アナイ
isn’t it ➡ イズニ (tが2個とも消滅)
kind of ➡ カイノブ
母音+母音で、yまたはwを挿入
The end. ➡ ジイェンド (The yendに近い発音)
Hurry up. ➡ ハリヤップ (Hurry yupに近い発音)
Go out. ➡ ゴワウト (Go woutに近い発音)
Call me earlier. ➡ コールミヤリア
You are all amazing. ➡ ユワラメイジング (4語のリンキング)
more or less ➡ モウロレス(語末のeは消滅します)
子音+子音で、語尾の子音が消滅
語尾のt, d, k, pは、アクセントがない場合、弱く発音されるため、消滅または結合音に変化します。
want to ➡ ウォントゥ
get to ➡ ゲットゥ
went to ➡ ウェントゥ
with the ➡ ウィッザ
good day ➡ グデイ
red dog ➡ レドッグ
keep pace ➡ キーペイス
Is she ➡ イッシー
d+tの場合は、dが消滅し、t+dの場合は、tが消滅します。
used to ➡ ユーストゥ
had to ➡ ハットゥ
hard to ➡ ハートゥ
need to ➡ ニートゥ
find the ➡ ファインザ
What do you know? ➡ ワドゥユーノウ
get down ➡ ゲッダウン
子音+h…の場合、hは消滅しがちです。
ask him ➡ アスキム
give her ➡ ギヴァ
on his own ➡ オニゾゥン
should have been ➡ シュダビン
would have ➡ ウダヴ
子音+y…は、別の音に変化し、1語化
t+y… 「ch」の発音に変化。 haven’t you (ハヴンチュー), want you (ウォンチュー),
d+y… 「j」の発音に変化。 did you (ディッジュ), could you (クッジュ)
z+y… 「zh」の発音に変化。 as you like (アジュライク)
And, or, inなどとのリンキング
これらの単語は、弱く、あいまいに発音されがちなため、区別がつきにくく、最も難しいパターンです。
bread and butter ➡ ブレドゥンバタ
you and me ➡ ユーエンミ
black and white ➡ ブラックァンワイ
knife and fork ➡ ナイファンフォーク
come on in ➡ カモニ
cats ‘n’ dogs ➡ キャツンドッグズ
発音通りのスペリング
アニメ、歌の歌詞、映画の字幕などで、発音通り綴った単語を見かけることがあります。
これは、視覚方言(eye dialect)と呼ばれるもので、総数約30万語の内、約4万語が下記URLに掲載されています。
下表には、その内の極く一部を転載しました。
引用:https://en.wiktionary.org/wiki/Category:English_eye_dialect
‘a’ | have | gonna | going to |
…in’ | …ing | ‘em | them |
‘alf | half | wanna | want to |
anoda | another | gotta | got to |
‘appy | happy | sorta | sort of |
‘ave | have | shoulda | should have |
az | as | ‘n’ | and |
befo | before | ‘key | okey |
behine | behind | ya | you |
cah | car | ‘cos | because |
dunno | don’t know | lotsa | lots of |
wuz | was | wimmin | women |
enuff | enough | peeple | people |
まとめ
英語のヒアリングが苦手な人は、日頃、正しい発音を心がけ、文章を正確に読む練習をしてきた、まじめな人たちです。
しかし、ネイティブの発音は、そのような正確な発音ではなく、上述したような、多分に「自然な発音」なのです。
そういう「非教科書的発音」に慣れていないと、聞き取れない場合があります。
ただ、漫然とアメリカ映画やTVの英語ニュースを聞いていても、慣れることはできません。
背景にあるルールを理解し、自分でもそういう発音を練習して、納得しなければなりません。
上記したルールを理解できれば、次第に同種のリンキングや、音の消滅を察知できるようになり、聞いた時、違和感がなくなります。
後、参考までに次のYouTube動画は、スティーブ・ジョブズが2005年にスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチです(英語・日本語の字幕付き)
リンキングが多用されています。